研究課題/領域番号 |
16390450
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
荒井 俊之 京都大学, 医学研究科, 助教授 (80175950)
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研究分担者 |
遠藤 伸之 財団法人若狭湾エネルギー研究センター, 研究部, 研究員 (30359244)
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キーワード | 虚血再灌流傷害 / 一重項酸素 / 6-ホルミルプテリン / NAC / GSH / ヒスチジン / ラット肝細胞 / ヒトT細胞 |
研究概要 |
虚血再灌流傷害における一重項酸素の生成とその制御による組織傷害の緩和を検討するため、本年は以下の研究を行った。 1.基礎実験としての試薬系における一重項酸素の発生と消去ならびに酸素-17ガスの影響 プテリン誘導体である6-ホルミルプテリン(6FP)の水溶液に蛍光灯照射を行って一重項酸素が発生することを電子スピン共鳴法を用いて確認した。この一重項酸素はNAC、GSHならびにヒスチジンの添加により消滅した。また酸素-17ガスを溶液に溶存させた場合、酸素-17分子から成る一重項酸素が発生した。以上より、6FPは蛍光灯照射により溶存酸素から一重項酸素を産生することが分かった。 2.ラット肝細胞に一重項酸素を産生させた場合の細胞傷害と薬物によるその緩和 ラット肝細胞を採取培養し、これに6FPを取り込ませた。その後、蛍光灯照射を行い、肝細胞内に一重項酸素が発生するか、また細胞傷害が生じるか、さらには薬物により傷害が緩和できるかを検討した。肝細胞に蛍光灯照射というのは、肝移植において実際に起こり得る状況である。結果は、24時間の蛍光灯照射により肝細胞に一重項酸素が発生し、培養液中の肝細胞逸脱酵素は増加し、ミトコンドリアの活性は低下した。即ち細胞傷害が生じた。この細胞傷害は共焦点レーザー顕微鏡によって形態学的にも確認された。1.で一重項酸素を消去したNAC、GSHならびにヒスチジンの効果は、NACとGSHは細胞傷害を緩和したが、ヒスチジンは無効であった。これはヒスチジンによる一重項酸素消去が細胞傷害を引き起こす過酸化水素産生を伴うためと考えられた。これにより肝移植では肝細胞傷害が起こり得る可能性が示唆され、NACやGSHの予防的投与の必要性も示唆された。 3.ヒトT細胞におけるSOの産生と消去 ヒトT細胞を採取培養し、これを低酸素状態(2%)にした後、通常酸素濃度状態(20%)に戻し、細胞内に6FPを加えた場合、一重項酸素が発生するか、また細胞傷害が生じるか、さらには薬物により傷害が緩和できるかを検討したが、これまでのところ一重項酸素の検出に成功していない。
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