研究概要 |
全身麻酔下に雄のC3H/HeJマウスの左大腿骨遠位端にosteosarconma細胞を注入し,骨癌疼痛モデルマウスを作成した.対照マウスには培養液のみの注入とした.投与14日後,足振り回数,安静時および強制時の歩行状態を記録した後に,osteosarconma細胞または培養液注入側のL2,3,4脊髄後根神経節(DRG)を採取し,RT-PCR, Western blotによる解析をおこない,TRPV1発現について検討を行った.加えて,TRPV1について免疫組織染色を行い,その分布と他の神経マーカーとの共存について解析した. 投与14日後,モデルマウスでは有意なフリンチ回数の増加と,安静時および強制時歩行障害を認めた.これらの癌疼痛関連行動はTRPV1の選択拮抗薬であるI-RTXの全身投与により用量依存性に抑制された.Western blotでは対照マウスに比べて,モデルマウスDRGでのTRPV1タンパク発現量およびmRNA量の増加が認められた.免疫染色ではDRGでのTRPV1陽性細胞数の増加が認められ,さらに対照マウスに比べてより大きな細胞体面積を有する神経細胞での発現が認められた.さらに,神経マーカーとの2重染色によりTRPV1は有髄神経とペプチド含有小型神経細胞での発現が増加することが明らかとなった.以上により,骨癌性疼痛モデルではTRPV1の発現が転写レベルで増加し,TRPV1陽性細胞数とその分布が異なること,さらに,骨癌性疼痛にTRPV1活性化が関与することが明らかとなった.
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