ハロタンで麻酔した神経型一酸化窒素合成酵素遺伝子ノックアウトマウスを開胸し、クレブス液約50mlを100mmHgの圧をかけながら左心室より潅流してから頚髄を摘出した。次に、ビブラトームを用いて、脊髄の腹側と背側を含むスライス標本(厚さ約150μm)を作成した。この際、脊髄スライス標本は、酸素93%+炭酸ガス7%で通気し、4℃に冷却したクレブス液内で作成した。ついで、この標本を、酸素93%+炭酸ガス7%(われわれのシステムではこの条件下でpH=7.4となる)で通気し、37℃に加温したクレブス液で満たした観察用チャンバーに入れ、約30分間おき、その後、顕微鏡で脊髄内動脈(径5-10μm)を観察した。これら動脈の画像をCCDカメラで撮影し、メディアコンバータを介してコンピュータに取り込んだ。動脈径の変化は、コンピュータ上で、フィジオテック社製(東京)の血管径測定用のソフトウエアを用いて解析した。 プロスタグランディンF_<2α>(0.5μM)を観察用チャンバーの潅流液中に入れ、約15分待って標本中の動脈の収縮反応が安定した後に、アセチルコリン(0.1μM)を潅流液中に追加した。少なくともこの濃度のアセチルコリンでは脊髄内微小血管の拡張反応は認められなかった。現在、これよりも高濃度のアセチルコリンによる拡張反応の有無を検討中である。その後、一酸化窒素合成酵素阻害薬L-NAME処置の有無による違い等を含め、脊髄微小血管の血管拡張反応に及ぼす一酸化窒素合成酵素の役割を詳細に検討する予定である。
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