研究概要 |
前立腺特異抗原(PSA)は糖蛋白であり、N結合型糖鎖が一ケ所存在する。PSAの糖鎖構造の癌性変異を検出するために、まずseminal fluid由来のPSA糖鎖の詳細な構造解析を行い、前立腺癌に特異的なPSAの糖鎖構造の変異を検出するレクチンの同定を行った。さらに詳細に前立腺癌特異的な糖鎖構造について検討したところ、PSAの糖鎖構造は従来同定された構造のみならず、非常に多様性に富んでいることが明らかになった。Stameyらのグループは2本鎖で末端にはシアル酸がα2-6でガラクトースに結合したN-glycanのみが発現していると報告したが、我々の検討では、計19種類の構造が同定された。しかも、末端のシアル酸はα2-6のみでなくα2-3でガラクトースに結合しているものも約10%存在することが明らかになった。さらに、Sialic acid alpha 2,3 Gal-GlcNAcが癌に多く発現していることが明らかになった。そこでSialic acid alpha 2,3 Gal-GlcNAcを免疫原として同構造を認識するモノクローナル抗体の作成を開始した。 また、前立腺癌診断の精度を向上させるため、サンプルとして前立腺由来のタンパクが大量に採取できる前立腺圧出液を用いたプロテオミクス的アプローチを採用した。経直腸超音波診断、針生検による診断法との比較検討を行っているところである。
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