研究概要 |
ヒト腎癌は手術以外には決定的な治療戦略がなくサイトカイン療法が軽度の効果を示すのみ、遠隔転移にも有効な治療法はない。ヒト腎細胞癌内ではclear cell renal carcinoma(clear cell RCC)の頻度が80%と最も多く、その70%はVon Hippel-Lindau(VHL)遺伝子の欠失と機能喪失が主な発症原因と考えられている。正常細胞でVHL蛋白はVCB複合体を形成しUbiquitin liagaseとして働き、低酸素時に転写因子Hypoxia Inducible Factor(HIF)を分解する。VHL蛋白が機能を喪失した癌化における状態ではHTFが過剰産生されて血管新生因子のVEGFやGlucose transporter等が蓄積し、血管新生の亢進や細胞内へのGlucoseが蓄積し癌の進展に都合の好い環境を作る。しかしこの変化のみではヒト腎癌の増殖進展を説明できず増殖機構をターゲットとしたヒト腎癌の治療には根本的な限界がある。我々はVHL遺伝子と協調して不活化している遺伝子群を探索する目的で、ヒト腎癌で特異的にメチル化を受けている癌抑制遺伝子群をスクリーニングし日本人腎癌で特異的にメチル化を受けている遺伝子群を同定した。 具体的にはRASSF1A,CHFR,CACNA1G, TMS1,COX2,DAPK, MINT1,MINT2,MIRC9,MIRC37等の遺伝子が種々の頻度でヒト腎細胞癌組織でのメチル化をうけており、腎細胞癌の株細胞でも、同様の遺伝子のメチル化を受けていることが判明した。これらの遺伝子とVHL遺伝子の不活化が協調してヒト腎細胞癌の発生進展がおこっていることが明らかとなった。また、HIF,VEGF,VHL病遺伝子、Elongan関係の研究で複雑な細胞内の蛋白ネットワークが腎癌の発生進展に関与する事が判明した。
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