研究概要 |
信州大学医学部医倫理委員会の承認の下、インフォームドコンセントが得られた患者の胎盤より羊膜を剥離し、羊膜の生物学的特性を解析した。特に羊膜の基底膜に存在する蛋白質の中で最も重要な蛋白質であるラミニンについて詳細に解析した。特にラミニンには12個のアイソフォームが知られているので、抗体によってどのアイソフォームが発現しているかを同定した。その結果、ラミニンalpha-2、-3、-5鎖、beta-1,-3鎖,gamma-1,-2鎖が発現していた。これらのことより、ヒト羊膜組織においては胎児型ラミニン-1、-3型は存在せず、成人型ラミニン-2、-5、-6、-10型の存在が示唆された。また羊膜由来上皮細胞や間葉系細胞は細胞外マトリックスと結合することによって生物学的特性を示すので、細胞外マトリックスに結合する蛋白質で、細胞の接着に重要な役割を持つインテグリンについ検討した。インテグリンはアルファー鎖18種類、ベーター鎖8種類が知られており、現在これらの組み合わせの中から少なくとも25種類知られている。現在これらの抗体を用いてどのインテグリンタンパク質が発現しているかを解析している。ヒト羊膜より上皮細胞、間葉系細胞を分離し、細胞表層抗原、増殖因子及び受容体、ホルモン及び受容体などの産生を解析した。またin vitroでの培養条件を検討することによって、ヒト羊膜の上皮細胞及び間葉系細胞の培養至適条件を見つけだした。羊膜より単離された上皮細胞及び間葉系細胞の増殖に関与する遺伝子(サイクリンやサイクリン依存性リン酸化酵素などの細胞周期調節因子、myc,jun,rasなどの発癌遺伝子、p21,p53などの腫瘍抑制遺伝子)、増殖因子及び受容体(FGF,PDGF,EGF,TGF-βなど)、ホルモン及び受容体(ER,PR,hCG,オキシトシン)などの遺伝子発現をRT-PCR及びDNAマイクロアレイ法で解析した。その結果、現在までに、FGF,PDGF,EGF,TGF-βやその受容体のは発現が、DNAマイクロアレイ法で確認された。
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