研究概要 |
羊膜の基底膜上にはラミニンのα2,α3,α5,β1,β3,γ1,γ2サブユニットが発現することを明らかにした。また、羊膜細胞に、未分化ES細胞に発現するOct-4、神経幹細胞に発現するNestinおよびMusashi-1が発現することを明らかにした。これらのことから羊膜に未分化な細胞群が存在することが考えられた。 羊膜は、羊水中のトリプシンや好中球エラスターゼを阻害するα1-アンチトリプシン(α1-AT)を産生することを見出し、炎症や感染症による羊水中のα1-ATの減少は、前期破水(premature rupture of the membrane : PROM)を引き起こし、早産の原因となると考えられた。 羊膜細胞は1)肝細胞の性質であるアルブミンやα1-アンチトリプシンを産生すること,2)インシュリンのmRNAを発現し、糖尿病モデルマウスへ移植すると血糖値を正常値にまで低下させること,3)分化誘導因子・in vivoの実験系により心筋細胞に特異的な転写因子であるNKX2.5、心房筋細胞に特異的なANP、心筋細胞の収縮蛋白の遺伝子MHCを発現すること,4)羊膜細胞には軟骨細胞に特異的に発現される遺伝子(Collagen type II, etc)、骨形成タンパク質(Bone Morphogenic protein ; BMP)およびその受容体(BMP-RIA, etc)の遺伝子を発現し、分化誘導因子、培養条件、スカフォールドの変化でCollagen type IIを発現すること,5)多孔質人工チューブ(人工気管)の内腔面をhAEで被覆後ラットの気管に移植後すると、線維芽細胞の内腔面への侵出が抑えられること,6)温度感受性ポリペプチドの利用により羊膜細胞シートが作製できること、などの性質を持つことを明らかにし、羊膜は再生医療にとって有用であることが明らかとなった。
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