研究概要 |
ヒト胚の子宮内膜への接着調節および子宮内膜上皮間への侵入には反発を誘導する因子が重要な役割を演じていることを確認する目的で、正常子宮内膜上皮でのEph-ephrin系分子群およびNeuropilin-semaphorin系分子群の発現様式の検索と発現制御因子の検討を行ったところ、ヒト胚にEphA1およびephrinA1がまた子宮内膜上皮にEphA1,2,4およびephrinA1が発現することが示された、さらにマウス胚盤胞を用いた実験にて、EphA1が胚の接着を抑制し、胚接着前の期間を可逆的に制御している可能性が示され、反発作用誘導因子であるEph-ephrin系分子群が胚接着の初期に重要な役割を演じている可能性が実証された。またヒト子宮内膜上皮由来細胞株であるIshikawaおよびRL95-2細胞の細胞間結合力に対する反発誘導分子群の細胞間結合解除作用に関する検討を行ったところ、Ishikawa細胞に存在するEphA1,2,4にephrinA1を作用させると細胞間間隙形成が促進されることが示され、Eph-ephrinA系分子群が胚の接着時期の制御に密接に関与している可能性が示され、このシステムにて子宮内膜上皮間の結合が減弱し、胚の子宮内膜への侵入が促進されている新しい概念が提示された。 またヒト絨毛外栄養膜細胞の浸潤制御機構を明らかにする目的で、胚着床部位の絨毛外栄養膜細胞におけるchemokine受容体、Eph-ephrin系、Neuropilin-semaphorin系分子の発現を検討し、primary cultureから分離した絨毛外栄養膜細胞での機能分子の発現検索と分離絨毛外栄養膜細胞の増殖能、浸潤能に対するchemokineおよび反発誘導分子の作用の解析したところ、細胞膜結合型peptidaseが重要な役割を演じていること、chemokineの供給源として母体血管内に沈着している血小板が強く関与している可能性が示され、ヒト絨毛外栄養膜細胞の血管内侵入機構に母体の凝固系システムが深く関わっていることが示唆された。
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