研究概要 |
本邦における卵巣癌の粗詑亡率は年々上昇し続け,この50年間で8倍以上となっている。卵巣癌は早期症状に非常に乏しく,初診時にIII/IV期の進行癌が過半数を占め,silent killerとの別称も存在する。 われわれは現在までに種々の成長因子や癌遺伝子(c-src, c-erbB2,IβF-1など)のトランスジェニックマウス(Tgマウス)を作製・解析してきた6われわれは上皮細胞を標的にしたTgマウスの作製のためのプロモーターとして各種ケラチン(1,5,14)を使用し,これらのマウスにおいて皮膚癌,胆嚢癌,前立腺癌,子宮頸癌などが発生することを明らかにしてきた。しかし,これらのケラチンは卵巣表層上皮には発現が認められず,卵巣癌の動物モデルとはなり得なかった。そこで,本研究においてわれわれは卵巣癌動物モデルの開発を目指した。まず,われわれは卵巣癌動物モデルとしてのTgマウスの作製のために有望なプロモーターの候補を探索した。いくつかの候補のなかからわれわれは最終的にケラチン8(K8)が卵巣表層上皮に特異的に発現していることを見いだすことができた。そこで,K8をプロモーターとして使用した各種発癌関連遺伝子のTgマウスを作製することとした。本年度は(1)まず,前段階として実際にこのK8 constructを使用したTgマウスにおける各種臓器におけるK8パターンを解析するために,K8をプロモーターとしたGFP(green fluorescent protein) Tgマウスを作製した。(2)現在,増殖因子(IGF-1),癌遺伝子(G-erbB2)および転写因子(E2F1)を標的としたDNA constructの作製を完了し、Tgマウスを作製中である。(3)いまだpreliminaryなdataではあるがerbB2 Tgマウスにおいて卵巣癌の前駆病変と考えられる卵巣表層上皮の乳頭状増殖が報察されており,現在も解析を進めている。
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