研究課題
老人性難聴モデルとしてPolg^<D257A/D257A>(D257A)マウス(DNAポリメラーゼガンマ(Polg)のエキソヌクレアーゼ領域(Proof Reading活性領域)に特定の点変異を導入したトランスジェニックマウス)を作成した。D257Aマウスと野生型マウス(Polg^<+/+>)を用いてABR閾値を検討したところ、D257Aマウス9月齢で平均41-52dBSPLと著明に聴力閾値が上昇し、加齢による中等度の難聴が出現することが判明した。組織的には有毛細胞、らせん神経節の変性が高度であり、DMAマイクロアレイによる遺伝子解析では音受容、neuro-transmission、イオン代謝、エネルギー代謝、DNA合成・修復に関する遺伝子群の低下、炎症反応やアポトーシス関連遺伝子群の増加がみられた。ゲルマニウム過剰摂取によるミトコンドリア障害マウスも作成し、3〜5ヶ月で高度難聴になること、蝸牛では血管条・コルチ器の変性が強いことを確認した。このモデルマウスでもD257Aマウスと同様の遺伝子群の変化が見られた。老人性難聴モデルマウスであるC57BL/6マウスではカロリー制限による老人性難聴抑制効果を調べ、正常食では加齢により難聴が出現するのに対し、カロリー制限群では少なくと1歳5ヶ月までは完全に難聴出現および組織変性を抑制できた。この2群のDNAマイクロアレイによる遺伝子解析では加齢による遺伝子の変化(音受容、neuro-transmission、イオン代謝、エネルギー代謝などの遺伝子群の低下、炎症反応やアポトーシス関連遺伝子群の増加)がカロリー制限で抑制できることが判明した。これら3つのマウスについて、重要な遺伝子についてはreal time RT-PCR解析で確認し、また蛋白については免疫染色により確認を行った。強大音響曝露直後および有毛細胞変性・scarの完成した時期のマウス蝸牛のDNAマイクロアレイ解析では多くの遺伝子群が増減しており、現在どの遺伝子に注目して解析を行うか検討中である。
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Neuroscience Letter 395
ページ: 18-22
Science 309
ページ: 481-484