研究概要 |
背景(昨年までの成果): 1)上咽頭がん患者のMMP1プロモーター領域-1607bpにおける一塩基多型(SNP)を解析した結果、本方法にて45例中43例にタイピングが可能であった。そして、患者の臨床データと比較し、とくに、粗生存率・無病生存率を中心とした各種データと遺伝子型との関連性について検定したところ1G/1G群の予後は有意に良いことが判明した。 2)上咽頭癌患者においてはと2G/2G遺伝子型を有する比率が有意に高いことが判明した(P=0.02) 3)各々の遺伝子型でLMP1蛋白レベルでの発現とMMP1の発現が相関しないことが判明した。 本年は 1)1Gアレルと2Gアレルの-1607bpを含むオリゴDNAを合成し、試験管内で合成したEts-1と混合してゲルシフトアッセイを行った。その結果、Ets-1/1G混合試料は速やかに移動したのに対してEts-1/2G混合試料は緩やかに移動した。すなわち、Ets-1と1G配列は結合しなかったのに対して、Ets-1と2G配列は結合したことが判明した。 2)1G/1G,1G/2G,2G/2Gおのおのの遺伝子型MMP-1プロモーターを挿入したレポータープラスミドとLMP1を同時に発現させると、2Gアレルを含むプロモーターからの転写が有意に高く活性化されることが判明した。この際にはLMP1がEts-1を誘導し、Ets-1がMMP-1プロモーター1607領域のGGAAT配列を介してMMP-1の転写活性化を促進することが判明した。 以上よりEBVがん遺伝子LMP1によるMMP-1発現はMMP-1プロモーター1607一塩基多型により影響を受けることが判明した。
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