研究課題/領域番号 |
16390488
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 隆之 京都大学, 医学研究科, 助手 (50335270)
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研究分担者 |
喜多 知子 独立行政法人理化学研究所, 発生・再生科学総合研究センター感覚器官発生研究チーム, 訪問研究員 (20362519)
船曳 和雄 財団法人大阪バイオサイエンス, システムズ生物学部門, 研究員 (00301234)
安里 亮 京都大学, 医学研究科, 助手 (70283603)
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キーワード | 細胞移植 / 遺伝子治療 / 内耳 / 神経栄養因子 / ラセン靱帯 / 再生医療 / 感音難聴 |
研究概要 |
本研究は、内耳への遺伝子治療の臨床応用のためのストラテジーとして、体外でウイルスベクターを使用せずに細胞に遺伝子導入を行い、遺伝子導入を行った細胞を内耳に移植し、目的とする遺伝子産物を内耳に供給する技術開発を目的としている。初年度にいくつかの非ウイルスベクターの遺伝子導入効率の解析および疾患モデルの開発、細胞移植技術の開発を行った。平成17年度には、最も安定して遺伝子導入が行えた組み合わせであるリポフェクション法とNIH3T3細胞の組み合わせによる研究開発を行い、脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子を導入したNIH3T3細胞を作製し、培養系で、遺伝子導入細胞のBDNF産生能力をmRNAおよびタンパクレベルで確認した。さらに、マウス内耳に移植し、移植内耳での有意のBDNFタンパクの増加を認めることができた。しかし、移植したNIH3T3細胞は、蝸牛組織内に侵入する能力を持たないことも判明した。今年度には、蝸牛構造タンパクに関連する遺伝子を運ぶ役割を担う細胞に関する実験を行った。マウスを用い、骨髄間葉系細胞を移植細胞とした実験を行った。移植された骨髄間葉系細胞は、蝸牛組織内に侵入する能力を持ち、特に蝸牛ラセン靱帯、ラセン唇の結合組織に高頻度に侵入することが分かった。また、蛍光タンパク遺伝子を導入した骨髄間葉系細胞を内耳に移植した場合も蝸牛内に生着することが明らかとなった。これらの結果は、骨髄間葉系細胞が蝸牛組織内とくに蝸牛ラセン靱帯、ラセン唇に遺伝子およびその産物を運ぶ細胞として理想的であることを示唆する。同時に、蝸牛ラセン靱帯の選択的障害モデルマウスの開発を行った。ミトコンドリア毒である3NPを内耳局所投与することにより、比較的選択的に蝸牛ラセン靱帯の変性誘導が可能であること判明した。これらの結果は、次のステップである蝸牛構造タンパク再生を目的とした細胞-遺伝子治療開発の基盤となる研究成果といえる。
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