研究概要 |
平成18年度は神経栄養因子を遺伝子導入したHSV-1による神経再生効果について検討した。単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)自体の毒性を回避するため、複製不能型HSV-1を作成した。複製不能型HSV-1にLacZを導入し、耳介に接種したが、7日後の顔面神経内に遺伝子導入はみられなかった。間接的には困難と考え、次に顔面神経を外科的に露出して、LacZを組み込んだ複製不能型HSV-1を接種したところ、神経内への導入遺伝子の発現が確認された。その後、HGFを組みこんだ複製不能HSV-1を作成し、同様の手段で接種したところ、顔面神経麻痺の回復促進がみられた。さらに、神経の再生を誘発筋電図と組織学的(電子顕微鏡的)方法を用いて客観的に評価検討した。誘発筋電図は耳下腺部で顔面神経を双極電極で刺激し、口輪筋から筋収縮波形を導出したが、潜時の短縮と振幅の増大が認められた。また、電子顕微鏡的標本では、神経繊維は正常ではないないものの大小不同の多数の有髄神経と無髄神経の再生が確認された。 今後はBDNF, GDNF, CNTFなどの神経栄養因子をHSV-1にLacZを組み込み、マウスの耳介に接種し、神経栄養因子が顔面神経内の何処にどの程度発現するかをin vivoで検討する。具体的には神経栄養因子を遺伝子導入したHSV-1を接種し、5-10日後に顔面神経を摘出、マイクロスライサーにて薄切し、神経栄養因子の発現を免疫染色にて検討する。さらに、外傷やHSV-1再活性化による顔面神経麻痺モデルを用いて神経再生効果を臨床的、電気生理学的、病理組織学的に検討する。
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