研究概要 |
1.内喉頭筋支配運動神経細胞へ投射する上位中枢の局在に関する検討 transsynaptic tracerとしてヘルペスウイルスを用い、マウス内喉頭筋支配運動神経細胞を制御する中枢性神経細胞の同定に成功した。甲状披裂筋へは蝸牛神経核からの投射があることが判明し、喉頭のフィードバック機構の解明に寄与すると考えられる。 2.喉頭におけるコリン作動性神経制御機構に関する検討 末梢型ChATバリアントの特異的抗体を作成し、ラット喉頭に対する免疫組織化学法を行い、コリン作動性神経の喉頭への関与を明らかにした。 3.喉頭における知覚受容体に関する検討 カプサイシン受容体であるVR1,VRL-1を喉頭粘膜下に認め,喉頭の侵害受容への関与が明らかになった。また,喉頭に存在する味蕾様構造物にgustducin陽性細胞を認め,この構造物が味覚受容体としての機能を有していることを証明した。 4.節状神経節における衛星細胞の機能に関する検討 ラット上喉頭神経傷害時に、節状神経節における衛星細胞間のギャップ結合による細胞間コミュニケーションが増加し,病的な細胞環境の変化に対しての緩衝作用を向上させる可能性が示唆された。 5.喉頭における時計遺伝子発現に関する検討 マウス喉頭上皮における時計遺伝子PER1,PER2の発現を,免疫組織化学を用いて調べた結果,喉頭声門上部から気管にかけての線毛上皮及び喉頭腺上皮細胞の核にPER1,PER2の時間特異的な発現を認めた。発現のピークは夜間にあり,昼間には発現していなかった。哺乳類体内時計中枢である視交叉上核を破壊したマウスではこの発現のリズムは消失しており,視交叉上核からの制御を受けていることが判明した。これらの結果から、喉頭腺分泌に対する神経調節に時計遺伝子が関与している可能性が示唆された。
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