研究概要 |
1.反回神経障害における中枢性投射に関する研究 マウスの片側反回神経を切断し、7,14,28,56日後に輪状甲状筋にtranssynaptic tracerであるヘルペスウイルスを局注後、5日後に灌流固定し、脳を摘出した。全脳の連続切片を作成し、抗ヘルペス抗体を用いた免疫組織化学法に供した。標識細胞は非障害時と同様の分布を示した。これらの結果から、疑核運動神経細胞への投射については、反回神経切断が特に影響を及ぼすことがないことが明らかになった。 2.反回神経損傷モデルにおける過誤神経支配に関する研究 モルモットの内喉頭筋に傾向神経トレーサーを注入し、2日後、注入側の反回神経を切断し、神経栄誉因子を満たしたシリコンチューブで架橋した。3,6,9ヶ月の生存期間の後、異なる神経トレーサーを同一の内喉頭筋に注入し、3日後に灌流固定後、脳幹を摘出、連続切片を作成した。トレーサーによって標識された疑核運動神経細胞を座標軸上にプロットし、その分布図を作成中である。本研究によって、反回神経損傷後の神経再支配過程における神経栄養因子の神経再生促進効果の実際と過誤支配予防効果を明らかにできると考えているが、実験が終了しておらず、今後の検討が必要である。 3.知覚神経障害時における侵害受容器の変化に関する研究 喉頭神経炎症モデルと上喉頭神経障害による神経障害モデルラットにおいて、節状神経節細胞における侵害受容体の発現動態を、免疫組織化学法とin situ hybridization法を用いて検索した。切断後3日後では、節状神経節における侵害受容体は、正常同様、小型から中型の細胞に発現していたが、7日目では大型細胞に発現を認めた。また、これらの細胞は喉頭支配神経細胞の近傍に局在していた。この侵害刺激情報伝達の変化は、喉頭における神経因性疼痛の発症メカニズム解明に寄与すると考えられた。 4.喉頭神経系における基本転写因子の関与に関する研究 ラットの迷走神経を切断後、3,7,14日の生存期間の後、抗TAFII250抗体を用いた免疫組織化学法を、節状神経節、上頸神経節、喉頭、脳幹において施行した。切断後14日目では、節状神経節の尾側2/3の細胞においてTAFII250の発現低下を認めた。ジストニアの原因は知覚神経系の入力異常と言われている。痙攣性発声障害はジストニアが原因である可能性が高いと言われており、ジストニアと関連するTAFII250に関する今回の結果は、痙攣性発声障害の原因解明に関与するものと考えられる。
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