研究概要 |
加齢黄斑変性(AMD)は先進諸国における高齢者の中途失明の主要な原因であり,日本でも人口の高齢化に伴う増加傾向にある。AMDに対する治療としては脈絡膜新生血管(CNV)に対して近年新たな治療が試みられているがCNV発生後の治療では瘢痕形成による視覚障害が残存してしまうため,やはりCNV発生前にそれを予防する治療が必要と考えられる。 我々はCNVの前駆病変であるドルーゼン内に含まれるamyloidβ(Aβ)に着目し研究を行ってきた。昨年度にin vitroの実験でAβが網膜色素上皮細胞に作用して血管新生関連因子の発現を変化させ,培養血管内皮細胞の血管腔形成を促進することを示した。本年度は,in vivoでAβを過剰に発現させた場合に果たしてヒトのAMDの病態を再現できるかを調べた。Aβの分解酵素であるneprilysinを遺伝的に欠損したneprilysin knockout mouseを用い,このマウスが生後20ヶ月と高齢化した時点で眼球を摘出し,」光学顕微鏡,電子顕微鏡を用いて調べた。その結果,光学顕微鏡所見ではwild typeに比較し,neprilysin knockout mouseでは網羅色素上皮細胞に空泡形成などの変性所見がみられた。電子顕微鏡所見では,網膜色素上皮細胞の変性所見に加え,網膜色素上皮の貪食機能の低下による視細胞外部の蓄積、さらにヒトのドルーゼンに類似した網膜下沈着物がみられ,ヒトAMDに類似した病態が再現された。以上の成果は,AβがドルーゼンからAMD発症を惹起する重要な原因物質であることを示すものである。
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