研究概要 |
加齢黄斑変性(AMD)は先進諸国における高齢者の視覚障害の最大の原因であり,人口の高齢化に伴い益々増加傾向にある。AMDでは特に脈絡膜新生血管(CNV)が発生する滲出型AMDが重要であるが,CNV発生の分子機構は明らかではない。我々はCNV発生の前駆病変であるドルーゼンに着目し,特にドルーゼン内に含まれることが最近明らかとなったamyloid β(Aβ)に注目した。AβはAlzheimer病の原因物質であり,酸化ストレスを惹起し種々の細胞に働きかけて様々な加齢関連疾患を引き起こす主役物質である。そこでドルーゼンからAMDを起こす原因物質としてAβに着目して実験を行ってきた。 本年度はneprilysin knockout mouseの網膜を免疫組織学的,電子顕微鏡的に解析した。その結果,老齢のneprilysin knockout mouseの網膜では網膜色素上皮(RPE)細胞が空泡形成を伴って変性し,同時に貪食機能の低下によると思われる網膜下への視細胞外節の蓄積を認めた。さらにRPE下にdepositsの蓄積を認め,電顕的にはbasal linear depositsとbasal laminar depositsの両方であることが確認された。また免疫電顕法ではbasal depositsの内部にAβの蓄積が確認された。以上からin vivoの動物モデルにおいてAβの蓄積によりヒトAMDの様々な病態を再現することができ,AMD発生の原因物質としてAβが重要であることが明らかとなった。
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