研究概要 |
脂肪吸引手術による吸引物(元来、生理食塩水、血液、脂肪組織破砕物からなる)は浮遊する脂肪部分と下層の液体成分に分けることが可能である。脂肪部分由来の細胞をprocessed lipoaspirate (PLA)細胞、液体部分由来の細胞をliposuction aspirate fluid (LAF)細胞と呼ぶ。どちらも組織、液体を処理して採取した細胞群をstromal vascular fractions (SVF)と呼ぶ。両部分より採取したSVFを新鮮状態で、また培養して、その細胞群の性質を調べた。ほぼ同等数のLAFとPLA cellsが採取されたが、接着培養するとLAFの方が有意に少なかった。新鮮LAF細胞から採取したCD34+CD45-細胞を接着培養すると細胞の増殖が観察され、LAFには脂肪由来幹細胞(ASC)が含まれていることが示唆された。新鮮細胞の状態ではPLAとLAFは非常に異なる細胞表面マーカーを示すが、培養後の接着細胞は非常に似通った細胞増殖能、形態、分化能、細胞表面抗原発現を示した。接着培養すると、PLA細胞もLAF細胞もCD29,CD44,CD49d,CD73,CD90,CD105,CD151の発現する細胞の割合が増え、CD31、CD45の発現する細胞の割合は減少した。Multicolor FACSによる分析により、新鮮SVFは不均一な細胞集団であることがわかり、血液由来細胞群(CD45+)、ASC(CD31-CD34+CD45-CD90+CD105-CD146-),血管内皮細胞(CD31+CD34+CD45-CD90+CD105lowCD146+),血管周細胞(CD31-CD34-CD45-CD90+CD105-CD146+)、その他の細胞で構成されていることがわかった。接着培養を始めると、ASCはCD105の発現が劇的に増加した。ASCsは細胞培養により時間の経過とともにCD34発現を失う細胞が増えたが、われわれの細胞培養法においてはCD34を少なくとも10-20週間は維持することが可能であった。これらの結果は脂肪吸引物由来の細胞が細胞療法において有用であることを示唆している。
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