研究概要 |
従来分娩後に廃棄処分されていた胎児付属物である,臍帯・胎盤・羊膜のうち,臍帯から増殖能のある細胞群を分離することに成功した。 まず臍帯静脈から,酵素処理の条件を最適化することにより,血管内皮前駆細胞と思われる細胞を分離した。本初代培養細胞は,少なくとも数回の継代を経ても増殖能を保っており,さらに,マトリジェルを用いた血管新生アッセイにて,血管ネットワークの形成を認めた。 また,臍帯間質より,エクスプラント法により,間葉系幹細胞と思われる細胞を得た。本細胞をFACS解析した結果,CD31(-),CD34(-),CD49d(+),CD73(+),CD90(+),CD105(+),CD117(c-kit)弱陽性と,血管内皮前駆細胞と間葉系幹細胞の表面抗原特性を併せ持っていた。この細胞は,マトリジェルアッセイでは,血管ネットワーク形成を示さなかった。 ヌードマウス後肢の大腿動脈を結紮することにより,人為的に阻血状態を作り出し,この阻血後肢筋肉内に,分離された細胞を蛍光色素ラベルした後に注入して,血管あるいは間質組織への分化の有無を調べた。その結果,臍帯静脈から分離し蛍光ラベルされた細胞のみを注入した動物においては,ラベルされた細胞は2週間後には阻血後肢内に残存していなかったが,臍帯静脈から分離し蛍光ラベルされた細胞と,臍帯間質から分離した細胞を混ぜて同時に注入したところ,ラベルされた血管内皮細胞と思われる細胞によって裏打ちされた血管が形成されている所見が認められた。臍帯静脈由来の内皮細胞と,臍帯間質由来の恐らくは血管平滑筋前駆細胞とが,協調して,ヌードマウス阻血後肢において,新生血管を作ったと考えられた。 これらの結果より,臍帯組織から分離した細胞により,血管新生療法を行なう可能性が示された。
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