研究概要 |
Sarin等神経ガスに対して2-PAMに相当する解毒作用をもち、血液脳関門(BBB)通過可能なパム誘導体を開発することを目的として、本年度は様々なパム誘導体を有機合成し、その解毒効果について検討を試みた。有機合成されたパム誘導体は2-PAM、3-PAMおよび4-PAMの直鎖型alky1化合物(C2〜C18)、分子状alkyl化合物(isoamyl基、ethylhexyl基)ならびにalkylated benzyl化合物(benzyl、4-methylbenzyl、4-tert-butylbenzyl)であり、それぞれ極めて純度の高い合成物が得られた。次に、以前有機合成したサリン類似化合物isopropyl-4-nitrophenyl methyl phosphonate(INMP)を用いてヒト赤血球由来AChE活性を抑制し、IC50となる濃度を測定したところ15nMであった。そこで、このINMP濃度でヒト赤血球由来AChEを抑制し、有機合成したパム誘導体による解毒効果を測定した。その結果、直鎖型alkyl化合物では2-PAMs、3-PAMsおよび4-PAMsそれぞれにおいて異なった活性傾向を示し、2-PAMsでは炭素数が少ないほど高い活性を示し、3-PAMsは炭素数にかかわらずすべて低い活性を示したが、4-PAMsは炭素数の増加にともない活性の増大を示し、C10で2-PAMの60%程度の活性を示した。分子状alkyl化合物はそれぞれ同じ炭素数の直鎖型alkyl化合物とほぼ同様の活性を示したが、alkylated benzyl化合物ではそれぞれ同じ炭素数の直鎖型alkyl化合物よりも活性が高かった。さらに,比較的活性の高かったパム誘導体について、引き続き,ラット脳マイクロダイアリシス分析法を用いたパム誘導体を静脈内投与した後の透析液の測定により,BBB通過の可能性を検討しているところである。
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