本研究ではBMPが十分な骨形成活性を示すためには、BMP自身によって発現誘導されるBMP抑制分子の活性制御が重要であるとの仮説に基づき、それを検証する基礎研究を展開し、臨床応用に向けた基盤とすることを目的とする。前年度の研究成果に基づき、継続発展させ以下の研究を行った。 1)BMP抑制分子PRDCのin vivoにおける発現とその機能 間葉系細胞10T1/2細胞および骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞においてBMPによってPRDCの発現が誘導されることを見いだしたため、PRDCのin vivoにおける局在を調べた。マウス胎生期における発現の局在をin situ hybridizationにて観察したところ脊椎骨の原基、神経管での発現が認められた。また頭蓋冠由来初代培養細胞、MC3T3-E1細胞と間葉系幹細胞C1細胞を用い、それらに対してアデノウイルスを用いてPRDCの過剰発現を行い、その影響を調べた。PRDCを過剰発現させた上記すべての細胞で、alkaline phosphatase(ALP)とosteocalcin(OC)、BMPシグナルの下流の転写因子Id1の発現抑制が認められた。さらに頭蓋冠由来初代培養細胞においては、PRDCによりALP活性は減少し、石灰化も有意に抑制された。 2)PRDC siRNAによる骨芽細胞の分化形質に及ぼす影響 siRNA PRDC880によってPRDCの遺伝子発現抑制したところALPの発現促進とALPの酵素活性の上昇が認められた。これらのことからBMPによって発現促進されるPRDCが骨芽細胞分化およびBMPの作用に対して抑制的な働きを持つことが観察され、BMPとBMP antagonistの1つPRDCとのバランスが骨芽細胞分化過程において重要な役割を果たしていることを示唆している。
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