研究概要 |
我々は先に歯根膜機械受容器であるルフィニ神経終末の発生・再生過程に脳由来神経栄養因子(brain derived neurotrophic factor ; BDNF)が深く関与していることを明らかにした。BDNFの受容体であるTrkBはさらにneurotrophin-4/5(NT-4/5)と結合する。本研究ではNT-4/5遺伝子欠損マウス(ホモ型)と野生型マウスにおける歯根膜ルフィニ神経終末の発生・再生過程を免疫組織学的に検討した。 1.歯根膜ルフィニ神経終末における免疫組織化学と定量分析 ルフィニ神経終末の分布密度の経日変化は、両遺伝子型ともに経日的に神経分布密度は増加し、生後8週でほぼプラトーに達した。また野生型と比較してホモ型の神経分布密度は生後8週まで有意に低く、さらにホモ型マウスでは生後2週と3週間、生後3週と8週間で有意差があることを明らかにした。 2.TrkB, p75-NGFRのタンパクレベル,遺伝子レベルでの発現の変化 歯根膜,三叉神経節共に発現量の変化はなかった. 3.終末シュワン細胞の動態 両遺伝子型ともに非特異的コリンエステラーゼ染色パターンおよび細胞形に相違はなく,歯根膜単位面積に対する陽性細胞数の経時変化にも相違は認められなかった. 4.下歯槽神経切断におけるNT-4/5欠損マウス歯根膜ルフィニ神経終末の再生過程 観察期間を通してホモ型マウスが有意に低い値を示し,特に,術後3〜10日にかけて有意に低く,NT-4/5は再生過程の初期段階において重要な役割を果たしていることが示唆された. 以上のことより,NT-4/5は歯根膜ルフィニ神経終末の発生.再生過程の早期に関与することが明らかとなった.また,NT-4/5やBDNFのようなさまざまな神経栄養因子が時期依存的に歯根膜ルフィニ神経終末の発生・再生過程に関与していることが示唆された.
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