研究課題
基盤研究(B)
歯周病や慢性関節リュウマチに代表される炎症性骨破壊は、破骨細胞による過剰な骨破壊が原因である。これらの骨破壊を抑制するためには、破骨細胞の骨吸収機能をターゲットとした抑制薬の開発が望まれている。本研究の目的は、破骨細胞機能の過剰な亢進を抑制する脱リン酸化酵素SHP-1が、RANKL/RANK受容体下流の情報伝達経路中に存在するどのタンパク質と結合してその抑制機構を発揮するかを明らかにすることである。我々はまず、SHP-1のフォスファターゼ活性が70%に落ちたme^v/me^vマウスにおいて、破骨細胞の骨吸収機能が亢進していることを確かめた。これには、コラーゲンゲル上にまいた骨髄細胞と骨芽細胞との共存培養で誘導した成熟破骨細胞を用い、象牙切片上に作られたピット面積を計測した。この結果から破骨細胞の機能亢進をSHP-1が抑えていることが明らかとなった。本研究ではSHP-1の結合タンパクに対するsiRNAを設計して骨吸収機能をスクリーニングする予定であるが、その前段階として、我々が開発しているNF-κBの活性化抑制ペプチド(Nat Med10,617-624,2004)を用いてRANKL誘導の骨吸収能亢進に対する効果を検討した。備品として購入した3D形状計測顕微鏡を用いて従来法のピット面積だけを計測した結果と体積まで計測した結果を比べてみた。興味深いことに、RANKL刺激によるピット面積の増加率より体積を計測した際の増加率が著しく高く、体積を計測した方がNBDペプチドによる抑制効果が明らかに示された。このことは、3D形状計測顕微鏡の有用性を強く示唆している。SHP-1のコンストラクト(野生型と酵素活性がないmutation型)を東京都老人研の水野博士より供与を受け、現在RAW細胞に導入中である。トランスフェクション効率が悪かったため、効率の良いRAW細胞株をクローニング中である。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (4件)
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