研究課題
基盤研究(B)
脱リン酸化酵素であるSHP-1の酵素活性低下は破骨細胞が骨を吸収する能力を著しく高める。このことは、SHP-1が破骨細胞機能発現において負の制御を司っていることを示唆する。我々はSHP-1の結合タンパクを同定することにより、その結合タンパクとの相互作用を強めるアゴニスト設計により破骨細胞機能を抑制する薬剤の開発を行おうと計画した。すでに293T細胞内にSHP-1を含むコンストラクトをトランスフェクションし、SHP-1の結合タンパクをMALDI-TOFを用いて同定してきた。同定したタンパクは、La binding protein,ribosome protein L4,protein tyrosine phosphatase 1c,KRT19であった。ところが同定したと思っていたこれらのタンパク質は結局SHP-1のフラグメントもしくは非特異的な結合タンパクであることが分かり、次のsiRNAを用いたスクリーニングまで及ばず、しかるにSHP-1のアゴニスト設計には至らなかった。SH2ドメインを欠失したコンストラクトや酵素活性部位に点変異があり酵素活性のなくなるSHP-1コンストラクト、さらにはSH2ドメインを一つだけ欠失したコンストラクト、さらには酵素活性部位のみを発現するコンストラクトなどを用いてとGST融合タンパクを作成し、骨髄細胞系の細胞株であるRAW264.7細胞株に導入しGSTプルダウン法で特異的な結合タンパクを解析したが、この方法を用いてもSHP-1結合タンパクは同定できなかった。しかしながら、今回スクリーニングをするための備品として購入した3次元表面形状測定装置を用いて破骨細胞機能の定量解析法が確立されたことは特記すべきことである。今まで骨が吸収された面積のみを指標としてきた破骨細胞機能の評価に革命的な変革をもたらすことになった。すでにNature Medicine, Journal of Clinical Investigationなど4本の論文がこの機械により計測した結果を掲載している。面積だけでは評価しきれない骨吸収能を深さ方向まで定量できるこの装置は、今後の薬物開発において力強い武器となると思われる。
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