研究課題
前年度の研究により、我々が血清から単離・同定した血小板由来因子は、BMPによる骨芽細胞分化を強力に促進することが判明した。本因子の作用はBMP-2と同時に標的細胞に作用したときに認められ、本因子で前処理した細胞には全く効果を示さないことが判明した。本因子とBMPを作用させた細胞内では、BMPのシグナル伝達因子であるSmad1/5/8のリン酸化が更新したことから、これがBMP作用の促進を引き起こすものと考えられた。本因子は、経時的に標的細胞の中に取り込まれることも明らかとなった。これは温度感受性で、細胞表面のタンパク質を除去すると取り込みが抑制されるが、ヘパラン硫酸などの糖鎖を除去しても取り込みに変化は認められないことから、タンパク質を介したエンドサイトーシスによって取り込まれると考えられた。本因子を血小板内で過剰発現させたトランスジェニックマウスと、本因子を欠失したノックアウトマウスを用いて、骨折の再生過程を比較した。その結果、ノックアウトマウスでは骨折治癒が遅延し、トランスジェニックマウスでは逆に治癒が促進することが明らかとなった。同時に、我々はヘパリンのような硫酸化多糖がBMP活性を強力に促進することを見いだした。このヘパリンによるBMP活性の促進作用は、マウスを用いたin vivoの異所性骨形成実験でも確認された。ヘパリンの作用メカニズムとして、主に分解によると考えられるBMPの急激な消失を抑制し、BMPの半減期を約20倍に延長することが重要と考えられた。我々が見出した因子は、ヘパリンと異なり短時間で作用を示したことから、ヘパリンと本因子の作用メカニズムは異なることが示唆された。本因子は、生理的な骨形成や骨再生を制御する重要な因子と考えられる。
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