研究概要 |
耳下腺腺房細胞においてはβ受容体刺激により細胞内cAMP濃度が上昇し,アミラーゼの調節性開口放出が引き起こされる。この分泌刺激応答に関して,今年度は次の知見を得た。 1.細胞内cAMP濃度の分解はサイクリックヌクレオチドホスポジエステラーゼ(PDE)により触媒される。ウサギ耳下腺腺房細胞におけるPDEに関して検討をしたところ,PDEアイソフォームの1つPDE4Bが存在し,cAMPを介したアミラーゼ開口放出に関わることが明らかとなった。また,このPDE4はPDE阻害剤ロリプラムに対する感受性を有するが,マウスやラットの耳下腺腺房細胞の開口放出にもロリプラム感受性のPDEが関与することを示唆した。 2.ラット耳下腺腺房細胞の初代培養系を確立し,それを使用して分泌顆粒の形成調節を検討したところ,シンタキシン6が顆粒形成に関わることを示唆した。また,シンタキシン6はVAMP4と結合し,機能する可能性が示唆された。 3.低分子量GTP結合タンパク質に関してRhoAと関連のあるRac1の存在を検討したところ,ラット耳下腺腺房細胞の膜画分,細胞質画分,分泌顆粒膜にRac1の局在を認めた。Rac1に関与するGEFの阻害剤の効果を検討したところ,アミラーゼの調節性分泌には関与しないことが認められた。 4.分泌顆粒膜における膜ドメインの役割を検討したところ,精製分泌顆粒膜より可溶化剤で溶出されない膜ドメインの分離法を確立した。成熟および未成熟分泌顆粒を生化学的に分離し,その膜上での膜ドメインとそこに含まれるタンパク質の動態を検討したところ,シンタキシン6の動態に変化が認められ,分泌顆粒形成への役割が示唆された。
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