研究概要 |
本研究は血管新生抑制因子としてのPEDF受容体の単離およびその機能解析を最終目標としている。 1,(1)PEDFの血管新生抑制活性に重要な部位の特定 PEDFのどの部分が血管新生抑制因子として重要かを調べる目的で、 PEDFの細胞外マトリックス結合部位に変異を加えたPEDF変異体を恒常的に発現するHeLa細胞株を樹立した。ヘパリン結合部位変異株R148A、コラーゲン結合部位変異株(D299N)、糖鎖付加部位変異体株(N284Q)はそれらの細胞株自体の細胞増殖速度は野生型対照群と比較して変化は認められなかった。次に、ヌードマウスへ移植し、経時的にその大きさを測定した。ヘパリン結合部位変異株と糖鎖付加部位変異体株は野生型対照群と同様にガン組織の増殖抑制が認められたが、コラーゲン結合部位変異株はその作用を示さなかった。また、移植後3週目の組織標本の結果から、PEDFのがん抑制作用は血管新生と相関していることがわかった。この結果から、PEDFの血管新生抑制作用の1つにコラーゲン結合部位が大きな役割を果たしていることがわかった。 (2)PEDFレセプター結合部位探索のためPEDFのC末欠損変異導入したPEDFのC末欠損変異体を作製したが、残念ながら細胞外に分泌されなくなり、PEDFレセプターの検索にはPEDF全長を蛍光ラベルしたものを用いることとした。PEDF-DsRed融合タンパクの精製を行っており、リガンドが得られ次第即座に発現クローニングを開始する。スクリーニングに用いるライブラリー発現細胞は既にBa/F3に前立腺由来cDNA含有レトロウイルスを用いて作成した。 2,PEDFの発現調節について。翻訳開始コドンを含む12kbのPEDFプロモーター部位を単離し、様々な長さを持つプロモーター領域をルシフェラーゼレポーター遺伝子の前に挿入した。PEDF発現にこれまで転写レベルでの調節がないと言われていたが、ルシフェラーゼ活性によるプロモーター活性の検索の結果、開始コドンより約1.7kb上流に細胞周期、加齢に依存するプロモーターが存在することを発見した。
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