研究概要 |
血管新生抑制を介した癌の増殖制御を目的とし,おとり遺伝子治療法の効果について研究を行った.VEGFやHGFなどの血管新生因の発現はTNFαにより活性化された転写因子Sp1の作用が重要である.そこで,TNFαで活性化するSp1をおとり遺伝子治療法の標的として以下の実験を行った.[おとり遺伝子の合成]おとり遺伝子すなわちSp1が認識する塩基配列(7塩基)と,その上下流のダミー配列8-10塩基により設計した二本鎖合成オリゴヌクレオチドを調整した[HVJ-リポソームによる導入法の確立]おとり遺伝子導入にはHVJ-リポソーム法を用いた.すなわち,リン脂質とコレステロールによりおとり遺伝子を封入した陰イオン帯電リポソームを調整しHVJと融合させ,おとり遺伝子含有HVJ-リポソームの調整法を確立した.さらに,培養細胞への様々な導入条件を検討し,常時100%の導入効率を示す導入方法を決定した.[おとり遺伝子導入の効果]おとり遺伝子をHVJリポソーム法により培養癌細胞に導入すると,TNFαにより亢進されるVEGFやHGFあるいはTissue factorなどの複数の血管新生因子の産生を同時に抑制することができた.また,Sp1を標的としたおとり遺伝子の導入は,癌細胞の増殖能や細胞遊走能も抑制されていた. 以上の結果よりSp1を標的としたおとり遺伝子治療法は複数の血管新生因子の産生を制御するのみでなく,癌細胞の増殖や浸潤・遊走も抑制する事が可能であり,効果的な癌遺伝子治療法として臨床応用できる可能性が示唆された,今後,動物の腫瘍モデルにおいて検討を行い,臨床研究にむけて,研究を展開していく予定である.
|