一般のヒトが歯科受診をしぶる原因として、歯の切削によって生じる末梢神経性の痛みが主たる要因ではあるが、切削に用いるタービンやエンジンによって生じる「音」や「振動」も大きな要因と考えられる。そこで、本研究では切削音や振動が患者の精神活動に与える影響を明らかにすることを目的とし、骨導音の影響とストレスという面から研究をすすめた。また、最近は心臓や呼吸器系に障害を持った高齢者の受診が多くなってきている。そこで、歯科治療中の患者の脳内精神活動観測だけでなく全身状態管理法を確立して、医療事故の発生を防止する目的で研究を行なった。 被験者は実験の目的を理解して協力を申し出た12名を対象とし、ヘルシンキ宣言に基づいて実験を行なった。生体刺激条件としては超音波スケーラーで最大出力を100%とし、他に70%、50%の三段階を実験条件とした。観察記録装置として、治療状況はUSBカメラで記録し、判定の参考にした。 1、確立された方法による生体情報採取:患者がストレスや痛みを感じた際に生じる変化が自律神経系により発現されることから、脳波、心電図、心拍・SpO2、発汗について採取しLabVIEWで解析した。 2、空気センサーによる生体情報採取:空気センサーをユニット背部と座面にセットして心音と呼吸変化を採取した。 その結果、 1、従来、生体情報記録のために用いられてきた方法により、心拍(容積脈波)や呼吸波のピーク間の距離がストレスや疼痛により、変化することが明らかになった。 2、このことを、無拘束での生体情報記録を目的とした空気センサーでも記録可能であった。 この結果、歯科治療中の患者の脳内精神活動を含む全身状態管理法を確立して、医療事故の発生を防止することが、無拘束で測定する装置で行なえる可能性が見出された。
|