研究概要 |
本研究では,簡便で長期的な効果が期待できる新規のレジン系根面う蝕予防材料を開発することを目標として,抜去歯を用いたin vitroでの各種実験を行い,以下の事実を明らかにした。 1)歯根表面はエナメル質に比較して明らかに耐酸性が低く,pH6.5〜6.8の酸性度でも脱灰が生じる。 2)市販ワンステップ型接着システムの中では,脱灰能が強く,レジンの重合を硬化機構の主体とする材料が歯根象牙質に対して安定した接着界面を形成する。 3)市販ワンステップ型接着システムを歯根面に適用した場合,表面が薄く被覆され,接着界面にはセメント質とのhybridized layerを形成して良好な接着性が発揮されるものの,酸による脱灰に対する十分な保護機能の発現は期待できない。また,市販の歯根象牙質封鎖用シーラーは,表面の被覆効果が高く,脱灰抑制にも有効であるが,歯根面への接着性が大きく劣っている。 4)セルフエッチングプライマーと他官能メタクリレートレジンからなるツーステップ型の試作根面コート材は,歯根面に適用した場合,市販ワンステップ型接着システムよりも厚い表面被覆を示し,セメント質とのhybridized layerの形成も確実である。そして,これらの性質により,酸による脱灰に対する抑制効果にすぐれ,露出歯根面の保護に有効である。さらに,試作コート材は,歯ブラシ磨耗に対してもすぐれた耐久性を備えている。 以上の結果より,露出根面に対しては酸の侵襲からの積極的な保護を施す必要があり,その点で,本研究において試作・検討したレジン系コート材の適用が有効な方法となりうることが示唆された。
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