研究概要 |
キトサンは種々な生理活性を有している。キトサンが骨病変において骨形成を促進すると報告されているが、遺伝子レベルで硬組織形成細胞をどのように調整しているかは、ほとんど解明されていない。 前年度は、アルカリフォスファターゼ活性を上昇可能な極低濃度のキトサンモノマー塩酸塩で培養骨芽細胞を刺激した場合の、遺伝子発現の結果をcDNAマイクロアレイおよびリアルタイムPCRによって検討した。その結果、JAK/STAT経路やMAPKカスケードへの影響を確認できた。 本年度は、さらにJAK/STAT経路やMAPKカスケードへの影響を検討するため、上流のシグナル関連タンパク質の発現状況をリアルタイムPCRによって解析した。その結果、キトサンモノマー塩酸塩で骨芽細胞を刺激3日後、MAPKKK11,Rac1,Shc1 mRNAは1.6〜1.7倍上昇し、Cell division cycle 42,growth factor receptor-bound protein 2 mRNAは、1.2〜1.4の軽度上昇が証明できた。 これらの解析結果から、キトサンモノマーはMAPKカスケード(JNKおよびp38)を介したシグナル伝達系によって細胞増殖と分化に影響していることを実証できた。さらに、本年度は、次年度に予定している、培養骨芽細胞へのエレクトロポレーション法による遺伝子導入法に関する、導入効率向上のための条件設定(電極の形状、電圧、パルス回数、細胞の観察方法)を行った。
|