研究概要 |
本年度は,カーボンナノ物質の生体適合性,カーボンナノチューブ(CNTs)を吸着させたスキャホールド上で培養した骨芽細胞様細胞の性状および骨髄細胞のマイクロアレイを用いた遺伝子発現の差異,CNTsを吸着したGBR(Guided Bone Regeneration)膜の作製とその骨欠損部への応用,さらに各種CNTs固化体の作製を行った. CNTsとカーボンナノファイバー(CNFs)をラット皮下組織に埋入し,1年という長期にわたって組織学的,超微細構造学的に検索した.CNTsとCNFsは,ともにマクロファージに貪食されライソゾーム中に観察されたが,CNFsの長さが短くなっているのに対し,CNTsの長さには変化が認められず,CNTsは生体内で長期間安定であることが示された. CNTsを吸着させたスキャホールドで骨芽細胞様細胞(Saos2)を培養すると,CNTsを吸着させていないスキャホールドに比較し,アルカリホスファターゼ活性が高いことが明らかとなった.また,このCNTsを吸着させたスキャホールド上で骨髄細胞をデキサメサゾンにより骨芽細胞に誘導し,コントロールと遺伝子の発現の差異をマイクロアレイで比較すると,1日後ではCNTsを吸着させたほうに,骨関連のタンパクの遺伝子の発現が認められた. CNTsを医療用PTFE膜に吸着し,GBR用の膜を作製し,ラット頭頂骨に作製した骨欠損部を被覆するように埋入し,組織学的に検索した結果,CNTsを吸着させたPTFE膜で被覆したほうが,欠損部の骨形成は優れていることが明らかとなり,GBR膜として臨床応用の可能性が示唆された.また,CNTsをプラズマ焼結法により固化することで,機械的性質が骨と近似した生体材料を得ることができた. 以上のin vitroおよびin vivoの結果から,CNTsをスキャホールドとして用いた骨再生療法の可能性が示唆された.
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