本研究の目的は、従来確立されていなかった、歯根膜に対する力学的応力に対する組織応答検索のための動物実験モデルを確立し、細胞レベルでのたんぱく質の発現やアポトーシスを詳細に検索すること、および咬合圧という物理的ストレスを生化学的な信号に転換する歯根膜細胞の観察を通して、メカノレセプターの存在とそれを担う細胞を推定すること、の2点である。 平成16年度はラット上顎臼歯に直径約1mmのワイヤーを接着し、固形飼料を与えて咬合性外傷を惹起する実験を行った。実験期間は1w、2w、4w、8w、12wとし、通法にしたがって組織切片を作製して光学顕微鏡下に観察を行った。これにより、歯根膜組織が破壊過程から再生過程へと転換する時期を詳細に検索でき、過度の咬合力によって歯根膜組織に破壊が起こる時期が確定できた。 この段階で骨関連蛋白を数種類選定し、これらに対する抗体で免疫組織化学的な検索を行ったところ、破骨細胞でオステオポンチンの発現上昇が認められた。通常オステオポンチンは細胞外に分泌される場合が多いが、本実験では細胞内にとどまっていた。そこで、破骨細胞にオステオポンチンの発現を誘導すると考えられているRANKLに対する免疫染色を行ったが、部位や細胞特異的な発現は認められず、本研究の条件下での特殊なオステオポンチン発現誘導経路が示唆された。これらの結果は下記学術雑誌に投稿し掲載されている。 咬合力が加わらない条件下での歯根膜の組織変化についても、検討の予定であったが、上記を優先したため、本年度はこれに関する実験は行なっていない。
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