本研究の目的は、従来確立されていなかった、歯根膜に対する力学的応力に対する組織応答検索のための動物実験モデルを確立し、細胞レベルでのたんぱく質の発現やアポトーシスを詳細に検索すること、および咬合圧という物理的ストレスを生化学的な信号に転換する歯根膜細胞の観察を通して、メカノレセプターの存在とそれを担う細胞を推定すること、の2点である。 平成16年度はラットを使用した実験モデルの確立と破骨細胞におけるオステオポンチンの発現を検索し、報告した。平成17年度は引き続き同様の動物実験を行ない、破骨細胞にオステオポンチンの発現を誘導すると考えられているRANKLに対する免疫染色を行った。しかしながら、前年度同様に部位や細胞特異的な発現は認めらなかった。今後歯根膜の再生に関連すると思われるペリオスチンやNotch1、CCN3についても検索する予定である。 一方、咬合力が加わらない条件下での歯根膜の組織変化について検索するために、ラットの下顎臼歯を抜歯し、3ヶ月固形飼料による飼育をした後に切片を作製し、オステオポンチンの発現を検索中である。 なお、当初の計画では今年度に培養細胞に対する機械的負荷をかける装置としてフレクサーセルを購入する予定であったが、配分された経費が不足していたため、これを購入していない。機械的な刺激に代わるものとして、温度刺激に注目し、骨芽細胞系培養細胞に対する温度刺激後のオステオポンチンの発現量の変化を検索した。その結果、一定の条件化ではその発現量が変化した。今後はin vivoにおける変化との関連を中心に検索を続け、温度と機械的刺激との共通点を見出す方向で検討する。
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