本研究の目的は、従来確立されていなかった、歯根膜に対する力学的応力に対する組織応答検索のための動物実験モデルを確立し、細胞レベルでのたんぱく質の発現やアポトーシスを詳細に検索すること、および咬合圧という物理的ストレスを生化学的な信号に転換する歯根膜細胞の観察を通して、メカノレセプターの存在とそれを担う細胞を推定すること、の2点である。 平成18年度は咬合力が加わらない条件下での歯根膜の組織変化について検索するために、ラットの下顎臼歯を抜歯し、3ヶ月固形飼料による飼育をした後に切片を作製し、オステオポンチンの発現を検索した。しかしながら、組織や細胞に特異的な発現は特定できなかった。最近メカニカルストレスに対する応答因子としてペリオスチンが注目されているが、現在のところ抗体が入手できておらず、今後は入手次第、各種条件にて行った実験による切片に対し、免疫染色を行う予定である。 さらに、機械的な刺激を細胞に加える装置を購入できないことから、これに代わるものとして、温度刺激に注目しラットを用いたinvivoの実験系を確立し、温度刺激と組織変化との関連を中心に検索を行った。実験部位はできるだけ単純化するために頭蓋骨としたが、この部にはほとんど骨髄組織が無く、今までの歯根膜を使った実験系で見られたような、破骨細胞は存在しない。その結果、温度と機械的刺激との共通点は今のところ見出せておらず、今後は実験系を見直し、大腿骨や歯根膜に対する熱刺激を使用するモデルを検討する。
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