研究概要 |
我々は,「成体幹細胞の分化制御機構の研究」を米国UCLA歯学部再建生体工学研究所の西村一郎教授と共同で行っており,「未分化な状態に保ったマウス骨髄間質幹細胞(BMSC)は,中胚葉系だけでなく外胚葉系の遺伝子をも混合的に一貫して発現しており,ひとたび目的方向へ誘導されると不必要な遺伝子群が選択的に抑制され,最終的に標的組織系細胞の形質が残る」という結果を本年度」Journal of Biological Chemistryに報告した。さらに本年度は,BMSC分化において遺伝子内部のエピジェネティックスな変化が関与している可能性を探るため,BMSCの骨系および神経系分化モデルを作製し,分化過程におけるDNAメチル化の関与を検討した。成体マウスより単離したBMSCを非誘導培地,骨系誘導培地,神経系誘導培地で培養した場合のDNAメチルトランスフェラーゼ(Dnmt)の発現をRT-PCR法により解析し,さらに発現遺伝子Nestinのプロモーター領域CpGにおけるDNAメチル化をDNAメチル化特異的PCR法により検討した。BMSCは神経系分化過程においてDnmt3aおよびDnmt3bを著明に発現した。DNAメチル化特異的PCR法の結果,ターゲットとしたNestinプロモーター領域CpGは,非誘導BMSCではメチル化CpGが存在していたが、骨系分化BMSCでは非メチル化状態であった。以上の結果から,BMSCの分化過程には,分化組織に特異的な遺伝子群以外の遺伝子発現を抑制する機構が存在し,これにはDNAメチル化および脱メチル化などのエピジェネティックな要因が関与している可能性が示唆された。現在,BMSC分化過程におけるDNAメチル化の関与を解明する目的で,分化特異的DNAメチル化プロファイルをRLGS法により追跡している。
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