研究概要 |
本年度は,口腔関連QOLの指標として世界的に広く用いられているOral Health Impact Profile (OHIP)-14およびGeriatric Oral Health Assessment Index(GOHAI)の日本語版を用いて,咀嚼能率と口腔関連QOLとの関連について,被験者数を増やして検討を行った. 調査対象者は,大阪府老人大学講座受講者(OHIP-14:588名,GOHAI:440名)とした.調査項目は,質問票を用いた調査,口腔内検診,咀嚼能率とした.質問内容は,年齢,性別,健康状態の自己評価,経済状態の満足度,OHIP-14もしくはGOHAIとした.OHIP-14スコアとGOHAIスコアはともに分布に正規性が認められなかったことから,各群間の差の検定には,Mann-whitneyのU検定ならびに,Kruskal-wallis検定を用いた.さらに,口腔関連QOLの低下を示すOHIP-14スコアならびにGOHAIスコアの上位25%をカットオフ値として対象者を2群化し,それを目的変数としたロジスティック回帰分析を行った.有意水準はいずれも5%とした. 対象者のOHIP-14スコアの平均は11.9, GOHAIスコアの平均は12.6であった.各群間の差の検定の結果,OHIP-14スコアとGOHAIスコアはともに,健康状態の自己評価,経済状態の満足度,残存歯数ならびに,咀嚼能率との間に有意な関連がみられた.ロジスティック回帰分析の結果,OHIP-14スコアでは,年齢,経済状態の満足度,残存歯数が有意な説明変数となったが,咀嚼能率は有意な説明変数とならなかった(P=0.115).一方,GOHAIスコアでは健康状態の自己評価,残存歯数に加え,咀嚼能率が有意な説明変数となった(P<0.001). 以上の結果より,口腔関連QOLの指標であるOHIP-14とGOHAIはともに咀嚼能率との間に有意な関連があったが,他の要因をコントロールした上ではGOHAIの方が咀嚼能率とより関連の強いことが示唆された.
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