研究課題/領域番号 |
16390562
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
武部 純 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (50295995)
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研究分担者 |
石橋 寛二 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (90018771)
伊藤 創造 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (60203139)
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キーワード | インプラント材料 / チタン / オッセオインテグレーション / チタン表面処理 / 水熱処理 / HA結晶 / 遺伝子発現 / 細胞分化 |
研究概要 |
我々は、純チタン表面へ陽極酸化と水熱処理を行うことで陽極酸化皮膜表面上にハイドロキシアパタイト(HA)を析出させる表面処理(SA処理)法について検討してきた。その結果、SA処理インプラント体表面では初期の骨形成能が高く、口腔インプラント治療への有用性が示唆されてきた。しかし、骨形成メカニズムについては不明確であることから、平成16、17年度では骨伝導性に関わるSA処理表面性状・構造の解析、骨形成関連遺伝子マーカーを用いた遺伝子レベルでの解析を行ってきた。この結果から、我々はSA処理表面に形成されたHA皮膜の化学的要因による効果が骨形成促進に関与していると考察している。そこで平成18年度は、HA皮膜の生体内での挙動を解析する目的で擬似体液中にSA処理チタンを浸漬(ハンクス溶液;37℃、pH=7.4)して分析した。浸漬後(14、21、28日間)の走査型電子顕微鏡(SEM)観察では、日数経過にともないSA処理チタン表面では放電痕を含む陽極酸化皮膜から析出したHA結晶周囲に沈着物が確認された。さらに陽極酸化皮膜表面上においても同様の沈着物が確認された。電子プローブX線微小部分析装置(EPMA)においては、SA処理チタンでは浸漬前に比較してPとCaは高いレベルで広範囲に分布しているのが確認された。さらに陽極酸化皮膜、HA皮膜の構造とHA結晶についてX線回折(XRD)を用いて分析した結果、浸漬前と同じTiO_2(anatase、rutile)、Ti、HAの2θ、d値が検出された。 本研究より、HA結晶周囲と陽極酸化皮膜上に形成された物質は、PとCaを含む付着物であることがわかった。付着物が形成された理由としては、SA処理により析出したHA結晶は結晶性の高い六方晶系であること、六方晶系のHA結晶の特徴であるa軸・c軸の分極によるPとCaイオンの吸着現象の促進化、陽極酸化皮膜表面構造のぬれ性の向上と極性・表面エネルギーの関与が考えられた。SA処理チタン表面に析出されるHA結晶は、PとCaを吸着させる核としての効果があり、さらに陽極酸化皮膜上においてもPとCaの吸着現象が起こることから、骨組織内での早期の骨形成能を促進させる要因の一つとなっていることが示唆された。
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