研究概要 |
本報告では,メチレン鎖長の異なる3種のN-メタクリロイル-ω-ホスホン酸(NMωP)を合成し,NMωPをNMGly水溶液に添加したNMωP-NMGlyセルフエッチングプライマーを調整し,歯冠象牙質またはハイドロキシアパタイトをNMωP-NMGlyプライマー水溶液中に共存させ,NMωPおよびNMGlyと象牙質またはエナメル質との相互作用の詳細を^<13>C NMR法で検討するとともに,NMωP-NMGlyプライマー水溶液で処理した歯冠象牙質およびエナメル質に対するレジンの接着強さを測定して,NMωPのメチレン鎖長が象牙質およびエナメル質に対するレジンの接着強さにおよぼす影響を検討した. NMωP-NMGlyプライマー水溶液中に象牙質粉末またはハドロキシアパタイトを共存させると,NMωPの水酸基およびNMGlyのカルボキシル基が歯質成分のリン酸カルシウムを脱灰し,NMωP分子内水酸基およびNMGly分子内カルボキシル基が酸-塩基反応を起こすため,NMωP分子内α-メチレンカーボンカーボンおよびNMGlyカルボキシル基カルボニルカーボンピークは低磁場側にシフトした.このシフトの大きさから脱灰量を調べた結果,NMωPはNMGlyより強く歯質を脱灰すること,NMωP分子内メチレン鎖長が長くなると生成されるNMωPカルシウム塩の化学構造が異なることがわかった. NMωP-NMGlyプライマー水溶液で処理した象牙質に対するレジンの接着強さは約22MPaで,NMωP分子内メチレン鎖長および接着界面に生成されるNMωPカルシウム塩の化学構造の相違に関係なく,ほぼ一定値を示した.しかし,エナメル質に対するレジンの接着強さはメチレン鎖長が長くなるにつれて上昇し,化学的に安定なカルシウムホスホネートを形成するNMPPは24MPaと高い接着強さを与えることがわかった.
|