研究概要 |
本研究では,N-メタクリロイルグリシン(NMGIy)水溶液にN-メタクリロイルアミノエチルホスホン酸(NMEP)を添加したNMGIy-NMEPセルフエッチングプライマーを調製し,ウシ歯根象牙質および健全ヒト歯根象牙質に対するレジンの圧縮せん断接着強さを検討し,さらに歯根象牙質コラーゲンの構造について検討した. NMGIy-NMEPセルフエッチングプライマーで処理したウシ歯根象牙質およびヒト歯根象牙質に対するレジンの圧縮せん断接着強さを測定した結果,ウシ歯根象牙質の場合,レジンの接着強さはNMGIyに対してNMEPの添加量が増加するとともに,13MPaから17MPaまで上昇した.これに対して,ヒト歯根象牙質にレジンを接着した場合には,レジンの接着強さはNMGIy水溶液にNMEPの添加してもほぼ一定値,20MPaを示した.ウシ歯根象牙質とヒト歯根象牙質とでは異なった接着強さの濃度依存性を示すこと,健全ヒト歯根象牙質に対する接着強さはウシ歯根象牙質より高いことがわかった. つぎに,接着強さにおいてウシ歯根象牙質とヒト歯根象牙質との間に差異が生じた原因を調べるため,ウシ歯根象牙質および健全ヒト歯根象牙質の固体^<13>C NMRスペクトルを測定し,コラーゲンの構造について検討した.その結果,ウシ歯根象牙質コラーゲンに由来する^<13>C NMRスペクトルパターンは健全ヒト歯根象牙質のNMRスペクトルパターンと非常に類似し,明確な差異は認められなかった.また,抜髄ヒト歯根象牙質の^<13>C NMRスペクトルを測定し,健全ヒト歯根象牙質のそれと比較した結果,カルボニル領域の^<13>C NMRピークの線幅が増大し,コラーゲンのトリプルヘリックス構造の変化が若干認められた. 今後,有髄および無髄ヒト歯根,歯冠象牙質について,コラーゲンの構造解析をさらに進めていく予定である.
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