研究概要 |
レーザー溶接は,接合する金属部分にエネルギーを集中することができるため,人工歯やレジン床がある状態でも溶接が可能であり,ろう付けよりも強度があり,適合性も良好であるなどの多くの利点がある.しかし,異種金属を溶接する場合には,その組み合わせによって金属のレーザー光の吸収率や熱伝導率などが異なり難しいといわれている.そこで,異種金属のレーザー溶接技法の確立のため様々な検討を行なっている.今回は,次のような検討を行なった. 1.アルゴンガスによるシールド効果について レーザー溶接時に金属の酸化を防止するためのアルゴンガスシールドは高い溶接強度を得るために不可欠である.そこで,酸素濃度計を用いて,酸素濃度が0vol%となっている範囲を測定した.その結果,酸素濃度0vol%の範囲は狭く,アルゴンガスノズルの位置および流量の調整は重要であることが示唆された.したがって,アルゴンガスノズルを適正な位置に設定できるように何らかのガイドを作り,適正な流量でアルゴンガスを流すことが必要であった.一方,歯科補綴物は,大きさや形状が様々であり,手指によって補綴物を保持するため,溶接時に補綴物とノズルが接触することもある.そこで,アルゴンガスノズルの吹き出し口の形状や大きさなどを工夫するとともに,シールドが不十分な場合にはノズルを複数にして行なうことが効果的であった. 2.変形について レーザー溶接による変形は補綴物の作製において大きな問題となる.そこで,変形の少ないレーザー照射条件を検討した結果,貫通溶接する照射エネルギー密度で,なおかつ溶接欠陥の生じない最も低いエネルギー密度でレーザー照射する条件が良好であった.
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