研究概要 |
骨髄からの遺伝子発現量の分析は,顎骨の骨質の診断につながる可能性がある.Lysyl hydroxylase (LH)はコラーゲン分子間の架橋構造形成を担う酵素であり,結果的に骨質の決定に関わる可能性のある因子である.本年度は,潜在的に異なる骨質を有する老化促進マウスの下顎骨と大腿骨の骨髄におけるLHの遺伝子発現パターンを調べ,また骨芽細胞の分化マーカーであるI型コラーゲン(COLI)とアルカリフォスファターゼ(ALP)の発現パターンとも比較した.老化促進マウスは,老年性骨粗鬆症モデルのSAMP6,変形性顎関節症モデルのSAMP8,およびコントロールのSAMR1を用いた.遺伝子発現量は,それぞれの分子に特異的なプライマーを用いたリアルタイムPCR法によって測定した.COLI, ALP,とLH2は大腿骨骨髄に比べて下顎骨骨髄において高い発現量を示した.下顎骨骨髄のCOLIの遺伝子発現パターンが,3種類のマウス間で相違が認められ,SAMR1,SAMP8,SAMP6の順に高い値であった.下顎骨骨髄と大腿骨骨髄の双方において,COLIとLH1間およびALPとLH2間の遺伝子発現に高い相関が認められた.本法により,LH1とLH2の遺伝子発現パターンが骨芽細胞の分化マーカーのそれらと相関していたことから,骨髄による検討でも骨芽細胞に関わる因子の検出が可能であることが判明した.3種類のマウス間でのLHの発現パターンに相違が認められなかったことから,今後骨髄からの培養により誘導された骨芽細胞による検討およびLH2aとLH2bをさらに因子に加えた検討が必要であると考えられた.
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