研究概要 |
老年性骨粗鬆症患者は抜歯後の急速な歯槽骨の吸収をきたすなど少なからず歯科医学的にも問題となっているが,骨粗霧症患者の顎骨が骨粗霧症の性状を呈しているか否かについては議論の最中である.本年度は,老年性骨粗霧症のモデルマウスであるSAMP6とそのコントロールマウスであるSAMR1を用いて,SAMP6の下顎骨が骨粗霧症様の性状を呈している可能性を明らかにするために,骨の構造学的および材料学的見地から,それぞれ骨形態計測学的検証およびコラーゲン生化学的検証を試みた.6ヶ月齢SAMP6はSAMR1に比べ,下顎枝の皮質骨が薄く,歯槽骨の海綿骨量も少なかったことから,SAMP6の下顎骨は組織学的に骨粗鬆症様構造を呈していることが判明した.骨基質蛋白中に占めるコラーゲン量の割合も,SAMP6はSAMR1に比べ少なかったことから,SAMP6の下顎骨は材料学的特性としても弱い可能性が示唆された.また,コラーゲンのリシン基の水酸化が,SAMR1に比べSAMP6では多かった.水酸化したリシン基には糖鎖が結合しやすく,結合した糖鎖が多くなるとコラーゲン線維が細くなる現象が起こることが明らかにされていることから,おそらく,SAMP6の下顎骨のコラーゲンは線維が細いことが推測され,力学的に弱い可能性が考えられた.以上のことから,老年性骨粗霧症患者の顎骨は,全身骨と類似して構造学的および材料学的見地から,骨粗霧症様の骨性状を呈している可能性が示唆された.
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