研究概要 |
昨年度,老年性骨粗霧症モデルマウス(SAMP6)の下顎骨の生化学的検証により,骨粗鬆症マウスの顎骨は骨基質中に占めるコラーゲン量が少なく,リシン基の水酸化が亢進していることが明らかとなった。本年度は,同マウス下顎骨のコラーゲン線維を透過型電子顕微鏡レベルで分析した。コントロールマウス(SAMR1)に比べ,SAMP6のコラーゲン線維は直径が有意に大きかった(n=1,000,p<0.01)が,一定面積あたりのコラーゲン線維の本数に相違は認められなかった。これらの結果から,SAMP6の下顎骨骨基質中に占めるコラーゲン量の低下は,コラーゲン線維が細くなっていることによって起こっていることが強く示唆された。また,ピクロシリウスレッド染色切片を偏光顕微鏡で観察したところ,SAMR1では骨基質がオレンジ色から赤色を呈するのに対し,SAMP6では黄色から緑色を呈していた。この結果からもSAMP6のコラーゲン線維はSAMR1よりも細く,疎な状態が骨基質全体に及んでいることが示唆された。本年度の研究結果から,骨粗鬆症モデルマウスの下顎骨のコラーゲンは,リシン基の水酸化の亢進によりコラーゲン線維が細くなると同時に,骨基質中のコラーゲン量も減少しており,骨粗鬆症の顎骨でも全身骨と同様にコラーゲン線維レベルでの脆弱化が起こっている可能性が推測された。骨粗鬆症の顎骨は,骨量のみならず骨質も低下していることが示唆された。
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