研究概要 |
E1AFは我々がクローニングしたETSファミリー転写因子で、これまでにMMP-1,-3,-9の転写亢進により腫瘍細胞の浸潤転移に関係していることを我々は明らかにしてきたが、腫瘍の浸潤・転移に大きな役割を果たしていることが知られているtype IV collagenaseであるMMP-2の転写は直接亢進することはなかった。今回の検索により、E1AFは膜型マトリックスプロテアーゼ1(MT1-MMP)の転写を亢進すること、このMT1-MMPがMMP-2を活性化し、腫瘍細胞の浸潤転移を促すことが、細胞レベルでの実験的結果ならびに臨床材料を用いたreal-time RT-PCRアッセイにより明らかになった。 口腔腫瘍の発生過程で発現の異なる遺伝子発現をDNA microarrayを用いて検索した。21例の口腔扁平上皮がん、11例の前がん病変(過形成1例、mild dysplasia 1例、moderate dysplasia5例、severe dysplasia 4例)を対象とした。その結果、口腔扁平上皮がんでは、keratin14,17の発現亢進とkeratin4,13およびtransglutaminase3(TG-3)の発現低下が認められた。これらの遺伝子発現様式の違いは口腔扁平上皮の悪性形質発現と深く関係していることが示された。 化学療法あるいは放射線療法の効果を術前に判定することを目的にアポトーシス関連遺伝子の検索を行った。real-time RT-PCRおよび免疫組織染色により、Bcl-2ファミリー遺伝子およびタンパクの発現とp53タンパクの発現を調べ、術前治療効果との関連について検討した。治療抵抗性であった全例でp53の変異を認めた。Bcl-2が発現している症例は術前治療に対する抵抗性のある傾向を認めた。また、Baxは全例で発現の抑制を認めた。このような結果は、Bcl-2ファミリー遺伝子の発現が術前放射線・化学療法に対する抵抗性と関与している可能性が示唆された。
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