研究概要 |
本研究は基盤研究(B)の科学研究費補助金(平成16〜18年度)を得て、タキソテールや他の有効抗癌剤の口腔扁平上皮癌由来細胞株に対するアポトーシス誘導機構、主にFas/FasL(リガンド)経路の関与・ミトコンドリアの関与、カスパーゼ経路について、分子レベルで解析し、タキソテールの臨床応用に備え、抗腫瘍効果の理論的根拠を提示することが目的であった。 3年間の研究期間のうち平成16年度は、最初に口腔扁平上皮癌由来細胞株であるHSC-2,3,-4細胞を用いて、これに異なる濃度のタキソテールを加えて、経時的にアポトーシスを観察し、アポトーシス解析のための処理条件を決定した。タキソテール以外のアポトーシス誘発剤(セレニウム化合物、タキソール、シスプラチン)についても比較のため同様に検討した。 平成17年度はミトコンドリアを中心に解析を行った。細胞内のミトコンドリアがアポトーシス経路の中心的位置にあることが認識され、今までに発表された多くの研究が再検討されている。タキソテールによるアポトーシス誘導にもミトコンドリアが関与し、重要な役割を担っている可能性は大きい。また、新規抗癌剤の開発にはミトコンドリアに対する作用を決定することが必須である。 平成18年度は、アポトーシス・シグナルによるミトコンドリアの損傷は最終的にはチトクロームCの放出を引き起こすと考えられるので、これを検討した。チトクロームCはカスパーゼ(特に、caspase-9)と親和性があり、その活性化に働くことを予想し、これを検討した。 以上の結果より、タキソテールに加えてセレニウム化合物、タキソール、シスプラチンなどの抗癌剤の口腔扁平上皮癌細胞に対する殺癌細胞効果の中心はアポトーシス誘導能であり、本研究によりその詳細な機構が解明された。
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