研究概要 |
(1)ヒトロ腔扁平上皮癌における5-ALAを用いた蛍光強度の測定 5種のヒト扁平上皮細胞(HSC-2,3,4,Ca9-22,SAS)を培養し、(A)通常培養した細胞(B)通常培養後、5-ALAを作用させた細胞(C)通常培養後、光増感剤であるDFOおよび5-ALAを作用させた細胞に分けて、1×10^4個当たりの細胞の蛍光強度を測定した。その結果、細胞により蛍光強度に差を認めたが、(C)では細胞間の蛍光強度の差は縮小した。個々iの細胞ではいずれも(A)<(B)<(C)の順に蛍光強度は増加した。 (2)移植した癌細胞の分化度の判定 5種の細胞をマウスの背部に1×10^6個移植し、3週後に分化度を判定した。その結果、HSC-2は低分化、HSC-3、4は高分化、Ca9-22は低分化、SASは中分化であった。低分化な細胞ほど蛍光強度は強くなっていた。 (3)マイクロアレイによる遺伝子検索 蛍光強度別の細胞株の遺伝子発現を比較するべく、5種の細胞培養後、RNAを抽出し、Agilnt Human IA ver2.001igo microarrayにて解析を行った。BCL2L1およびBCL2L13が高分化な細胞において高発現していた。 DFOは鉄キレート剤として、PpIXのヘムへの合成を阻害することによりPpIXの蓄積を促すと考えられるため、細胞;内に取り込まれる5-ALAの量が増えるのではなく、ミトコンドリアの活性が蛍光発色に関与していると推察される。また、ミトコンドリアはEGR2により状態変化とカスパーゼの活性化を介して細胞のアポトーシスを誘導することが一般に知られており、EGR2はBCL2に作用する。このことから、マイクロアレイ解析でBCL2L1およびBCL2L13が高分化な細胞において高発現しており、5-ALAによる蛍光強度はミトコンドリアの活性が高い細胞ほど強くなることが示唆された。
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