研究概要 |
[目的]われわれは1999年にティッシュエンジニアリングの手法を用いてヒト培養複合口腔粘膜(培養粘膜)の開発に成功し、2000年5月より口腔粘膜欠損部へ臨床応用しているが、口腔の部位によって治癒の早さや瘢痕形成の程度に差がある傾向にある。培養粘膜移植を良好な結果に導くためには培養粘膜移植による口腔粘膜再生のメカニズムを解明することが必要である。私たちは培養粘膜移植による口腔粘膜再生のメカニズムを解明するために、ラット口腔内移植モデルを開発し、培養粘膜移植後の治癒過程を形態学的手法にて観察した。[方法]BALB/c(-)ヌードマウスの右側頬粘膜に3mm^2の口腔粘膜欠損創を作製し、ヒト口腔粘膜上皮細胞を用いた培養粘膜を移植した。コントロール群として、同様の口腔粘膜欠損創に培養粘膜の一部分であるヒト他家新鮮屍体真皮(AnoDerm^(R))を移植した。経時的に移植部を摘出して形態学的に観察した。 [結果]移植後5日では、作製したEVPOMEと同様な重層化した上皮層が,AlloDerm^(R)上に観察され、7日目では上皮表層が剥離、脱落する部分も認められたが、数層の連続した上皮層が観察された。移植後14日、21日では上皮層は厚みを増し周囲上皮と連続性していた。AlloDerm^(R)移植群では、術後14日目でも移植部分の上皮層は認められず、AlloDerm^(R)下層に炎症性細胞浸潤が多数認められた。[考察]これらのことから、EVPOME移植後の口腔粘膜の再生は、移植後7日目頃には上皮表層など一部が脱落する部分もあるが、基底層の上皮細胞は残存し、その後上皮層は厚みを増しながら周囲上皮と連続するものと考えられた。またEVPOMEは、AnoDerm^(R)移植と比較し、上皮再生に有利であることが示された。
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