研究概要 |
目的:口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるヒトパピローマウイルス16型(HPV-16)の存在とOSCC患者の予後との相関について検討すること。 対象:1992年から1999年にかけて我々が治療した日本人口腔扁平上皮癌患者66例 方法:HPV-16 DNAのhigh copy numberのみを検出し得るE7領域のプライマーを用いて,PCR法でDNAを増幅した後に,HPV-16 DNAの有無を電気泳動法で検出した。その後,HPV-16 E7DNAの存在と,臨床病理的因子(肉眼所見,部位,大きさ,転移の有無,分化度,浸潤様式,5年生存率)や患者の背景因子(年齢,性,飲酒,喫煙)との相関について統計学的に解析した。 結果:HPV-16 DNAは66例中24例(36%)で検出された。単変量解析では,HPV陽性腫瘍は外向性増殖とリンパ節転移の傾向を示した。極端に予後の悪い浸潤様式4はHPV陽性腫瘍で4.2%,陰性腫瘍で19%であった。ロジスティック回帰分析では,HPV陽性腫瘍は外向性増殖との相関を示した。 単変量解析では,大きな腫瘍と転移例は5年生存率が低かった。HPV陽性腫瘍は陰性腫瘍よりも良好な予後を示したが,有意差はなかった。多変量解析では,リンパ節転移とHPV陽性腫瘍が5年生存率との相関を示した。 HPV陽性患者の生存曲線は陰性患者のそれよりも緩い下降を示したが,統計学的有意差はなかった。しかし,HPV陽性,リンパ節非転移例の5年生存率は94%と著しく高く,HPV陰性,リンパ節転移例の5年生存率は25%と著しく低いことから,リンパ節転移の有無と同様に腫瘍中のHPV-16 DNAの存在有無が予後と関連していると推察された。
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