研究概要 |
HPVの口腔扁平上皮癌への関与について明らかにするために本研究を行い,以下の結果を得た。(1)HPVのL1領域を増幅するPGMY09/PGMY11 L1プライマーと,Takara PCR Human Papillomavirus Detection Kit中のE6プライマーとの感度についてreal-time PCRで比較した結果,両プライマーの感度は同程度であったが,後者の方が特異性が高いことが分かった。(2)同一患者の新鮮凍結組織,ホルマリン固定パラフィン包埋切片,swab sampleから抽出したDNAを,Takara Kitのプライマーを用いて増幅した。その結果,新鮮凍結組織とswab sampleではほぼ同様の感度を示し,パラフィン包埋切片では明らかに感度が低いことが明らかになった。(3)同一患者の腫瘍,腫瘍辺縁,正常部からswabにより採取したsampleから抽出したDNAを用いて検索したところ,腫瘍部が腫瘍辺縁部や正常部と比較して,HPVDNAコピー数が多いことが明らかになった。(4)扁平上皮癌の再発を繰り返す1人の患者において,HPV18型DNAのコピー数が高値を示したが,他の術後患者と健常者では低値であった。(5)リンパ節転移巣のホルマリン固定パラフィン包埋切片から抽出されたDNAでは,HPV16および18型のDNAを検出出来なかった。(6)HPVE7DNAを含む腫瘍患者群の方が,含まない患者群よりも5年生存率が高かった。(7)細胞周期調節因子Cdc25Aは,HPVE7の発現と正の相関を示した。また,他の細胞周期調節因子(14-3-3)は,HPVE6の存在と負の相関を示した。
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